2017年8月20日日曜日

初恋は薔薇色の鎖




漸く、漸くだ。
やっと愛機が我が手の元に。

一瞬で暗転してしまった僕の日常は、一部地域と時間帯を除いて我が魂を腐らせるには十分だった。
満たされぬ想いを紛らわす為、校舎の窓ガラスを割って廻ったり行きずりの女を抱きもした。

だが、地上何十センチからの流れる景色やざらついたアスファルトのあの感触の代りにはならなかった。
結局何をしても砕けた我が魂の乾きは癒される事は無かった。
一瞬の快楽は得られても、満足感や達成感がまるでなかったのだ。

しかしそれも今日までだ。
真紅の我が愛機が漸く帰って来たのだ。

思えば、僕の箱根某所第二章(熱闘編)はこの娘と共に始まった。
そういやこんな事もあったな。

焼けたオイルの匂いや直に感じる夏の熱気を受けながら、鮮やかによみがえるあんな事やこんな事。
あれほど満たされなかったハズなのに、ただ西湘やR134を流すだけで欠けたココロが埋められてゆく。

これだ、この感覚だ。
じりじりとした焼けるような熱気も、滴り落ちる汗ですら今の僕には心地良い。

帰り際、昔ながらの酒屋で飲むサイダー。
この時の満足感は、これでしか得られないものだ。
代りなど無いのだ。

僕の一目惚れと勘違いから始まったこの恋は、やっぱり未だに醒めないらしい。

イチイチ高額なパーツを要求してくるし、気難しいそのココロはラフな操作を許容しない。
驚くような性能を発揮する訳でもなく、しかし気位だけは高い。

だが、この娘は綺麗なのだ。
僕は未だにこの娘が世界で一番綺麗だと思っている。

10年近く経ってもそう思える事に、僕はDucatiに感謝したい。


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2 件のコメント:

  1. 返信
    1. ありがと!
      何だかお互いついてないけど、楽しみましょう!!

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