2012年3月19日月曜日

二人の同居人


「・・・今週末も雨でしたね。」
「別に私の所為じゃない・・・何が言いたいんだ?」
「・・・いえ。」
「ここで一つはっきりさせておこう。みな、私の事を誤解している。」
「というと?」
「外見と中身は必ずしも一致しないという事だ。見た目に騙されて、私に天候を支配する
力があると思っている。決してそんな事はありえないのに、だ。おかげで私は春夏問わず
吊るされ鐘を鳴らす羽目になっている。」
「でも、我らが主はそこまで迷信を信じるタイプではないのでは?」
「問題はそこだ。」
「・・・」
「我らが主はバカでヘンタイだが、知識が無い訳ではない。寧ろ目に見えないものは
あまり信じないタイプだろう。」
「ではどこが・・・」
「問題なのは彼がどちらかと言えばロマンチストだということだ。」
「ろまんちすと、ですか?」
「そうだ。普段は論理的な思考で物事を考えてはいるが、そんな事はないと思いつつも
どこかで目に見えない迷信やジンクスに期待している。そしてそういう一連の行動が
好きなのだろう。言ってみれば彼は”別れ際にブレーキを5回踏む”ようなタイプだ。」
「・・・」
「勝手に期待されても、こちらとしては困るだけだ。実際はただの風鈴なんだからな。」
「いや、そんなカッコで言われても・・・」
「だからこんなデザインは嫌だったんだ・・・ああ、店頭に陳列された時から嫌な予感は
してたんだ・・・」
「そうだったんですか・・・」
「その誤解で私は勝手にあらぬ期待をされて一年中吊るされている。夏は暑いし冬は寒い。
しかもこの季節は花粉が飛ぶ。珠にはのんびりしたいものだ。」
「休暇申請されてはどうです?」
「主のストレスメーターがリセットされるくらい晴れが続けば受理されるかもな。」


・・・ホント頼むよ、川上さん。

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