「・・・今週末も雨でしたね。」
「別に私の所為じゃない・・・何が言いたいんだ?」
「・・・いえ。」
「ここで一つはっきりさせておこう。みな、私の事を誤解している。」
「というと?」
「外見と中身は必ずしも一致しないという事だ。見た目に騙されて、私に天候を支配する
力があると思っている。決してそんな事はありえないのに、だ。おかげで私は春夏問わず
吊るされ鐘を鳴らす羽目になっている。」
「でも、我らが主はそこまで迷信を信じるタイプではないのでは?」
「問題はそこだ。」
「・・・」
「我らが主はバカでヘンタイだが、知識が無い訳ではない。寧ろ目に見えないものは
あまり信じないタイプだろう。」
「ではどこが・・・」
「問題なのは彼がどちらかと言えばロマンチストだということだ。」
「ろまんちすと、ですか?」
「そうだ。普段は論理的な思考で物事を考えてはいるが、そんな事はないと思いつつも
どこかで目に見えない迷信やジンクスに期待している。そしてそういう一連の行動が
好きなのだろう。言ってみれば彼は”別れ際にブレーキを5回踏む”ようなタイプだ。」
「・・・」
「勝手に期待されても、こちらとしては困るだけだ。実際はただの風鈴なんだからな。」
「いや、そんなカッコで言われても・・・」
「だからこんなデザインは嫌だったんだ・・・ああ、店頭に陳列された時から嫌な予感は
してたんだ・・・」
「そうだったんですか・・・」
「その誤解で私は勝手にあらぬ期待をされて一年中吊るされている。夏は暑いし冬は寒い。
しかもこの季節は花粉が飛ぶ。珠にはのんびりしたいものだ。」
「休暇申請されてはどうです?」
「主のストレスメーターがリセットされるくらい晴れが続けば受理されるかもな。」
・・・ホント頼むよ、川上さん。
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