2014年10月12日日曜日

Re:Dance with wolves






どんなに高性能なバイクでも車でも、接地している部分がタイヤである以上
タイヤの性能以上に走る事は出来ない。

ボディも足回りのジオメトリーも、全てタイヤの性能を引き出す為に存在する。
ドライビングもライディングも、結局は物理の世界だ。

だが、今僕の後ろにいるR6はそんなことおかまい無しに突っ込んでくる。
バイクの世界では、”実際速い人は、旋回速度はそうでもないが立ち上がりが速い”と良く言われるが
どうやら彼はそうではないらしい。

三叉路側で待機中に聞こえた、4気筒の甲高い音は”何か”を期待させるには十分だった。
今朝はあまり面白くはなかったので、半ば憂さ晴らしのつもりでそれほど多くを期待した
わけではなかったが、それでも僕は少し待って彼を誘うように走り出した。
だが、バックミラー越しに見える、三国峠までの上り区間での走りは僕の想像の遥か上を行っていた。

正直に言えば、箱根某所で今の僕のアベレージについて来れるバイクがいるなど
想像だにしていなかった。

それは油断であり慢心でもあり、結局の所ただ調子に乗っていただけなのだが
それでも僕には、”タイヤの接地面積の差による物理限界”という理論武装があり
事実、以前ここで絡んだ他のバイクでは、このペースで走ると段々見えなくなるのが常だった。

それに僕自身、1198でもこの箱根某所を走る。
他にはあまりいないだろうが、僕は同じ峠を2輪でも4輪でも走るのだ。
つまり僕は、2輪と4輪の違いを、同一のコースを”同じように”走る事で身を以て体験している。

今の僕には、S2000のペースを1198で再現などできない。

彼と僕の作り出すこのペースが、”2輪にとってどれだけ大変な事か”なんてことは
前を走る僕が誰より良く知っていた。

僕は軽いパニックに陥った。

それでも僕は”焦るな”と自分に言い聞かせ、状況を理解し受け入れ、整理する頃には
ちょうど三国峠を右に望む左の高速コーナーにさしかかっていた。

ここは、観光客の方々の出入りが激しいので、速度を落とし注意深く通過するのが流儀。

一度切った流れを整えるように、僕はS2000を下り区間に放り込む。
絶対的な接地面積の差がある以上、下りは4輪に分がある。

僕は少しだけ冷静さを取り戻し、バックミラーで彼をチェックする余裕ができた。
相変わらず彼はピタリと後ろに張り付くが、それでも2輪と4輪の違いに因る
得意不得意はやはり現れていた。

どうやら彼も余裕綽々でついてきているワケではないらしい。

人間とは現金なもので、それが分かると余裕ができ初め途端に面白くなってきた。
だが、下りきる手前で前がつかえてしまい、止む無くペースダウン。

こういう時、僕は必要以上に車間を空け前の車になるべくプレッシャーを与えないようにしている。
後ろの彼も同様に、大人しくついてきてくれる。

やがて、前の車が気を使ってくれたのか、脇にそれ前を譲ってくれると今度は再び上りのランデブー走行。
ところが、ペースダウン時に彼と僕の間に半ば強引に割って入ってきたGSX−Rか何かの
処理に少し時間を取られたのか、彼と再び絡み出す頃にはもう一本目は終わってしまった。

このままで終われる訳は無く、僕と彼は再び走り出した。

本来、このレストハウスを起点にする方が往路になるわけだが、僕は何方かと言えば
この往路の方が好きだ。

最初の、比較的高速コーナーが続く3速メインのフラットからやや緩やかな下り区間が、僕の得意区間になる。
僕はそこで、今朝は路面温度が低いのでRev縛りで走ろうと考えていた事などすっかり忘れ
ただ只管彼とのタイマンに熱中した。
いや、タイマンというよりは、ワルツ。

これ程面白い事が、世の中に他にあるだろうか。

途中、最初の下りの最後の方で変な所に駐車していた車を避ける為、一度流れを切ってしまったが
そこでの車間上でのやりとりさえ”リズムが合う”感覚。

その後の上り区間でも、晴れて日差しが出てきた事もありRev縛りなど最早存在すら忘れ
普段なら使わない3速まで駆使し、僕は彼を引き離しに掛かる。
当然彼はそれで引き下がるワケなど無く、深いバンク角で後ろから僕を駆り立てる。

それは三国峠から先の下り区間でも同様で、まるで天秤のように得意不得意が
ゆらゆらと現れては消え、その度に僕らを鼓舞していった。

自分の能力を思う存分発揮できる。
これほど楽しい事は無い。

下りきる頃、僕は笑っていた。

時間にして約10分。
こうして僕らは走り終えた。

その後、彼は会釈と手を挙げて挨拶してくれた後、駐車スペースに入っていった。
僕はそのまま、休憩しようとレストハウス方面へ戻ろうとしたが、どうしても彼と話をしたくなり
途中で引き返すことに。

彼等はとても若く、僕が想像していた”歴戦の勇者”とは大分イメージが違っていた。
そして突然彼が聞いてきた”ひょっとしてドカ乗ってます?”の一言で
実は一度彼とここで会っている事に気がついた

箱根はこういう出会いがあるから面白い。

それにしてもバイクでアレだけのペースが作れるってホントスゴい。
ただ、走り終えた後の彼のR6のリアタイヤを見て、僕はちょっとだけホッとした。

あれで”いや、全然余裕ですよ”とか言われたら今頃きっと泣いてるからねw
それにしても今朝はホント楽しかったな。

土日に限って台風直撃なんていう悪意の籠った週末もこれで健やかにすごせそうだ。
さて、明日は我が愛機S2000の健康診断。

あ〜・・・1198乗りてえw


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2 件のコメント:

  1. 羨ましいなぁ
    R6でそこまでタイヤ使えるなんて
    私には無理だな

    NSRならあるいは?

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    1. いやいや、もっと通えばあるいはw
      戻ってくれば良いのです♫

      NSR、増車ですかw?

      削除