僕はこの漢を甘く見ていた。
もうそろそろ32Rじゃ限界だろう、そう思っていた。
事実、去年の走りを見てもVSキクチ戦でもVS悪2000でもツラそうに走っているのは目に見えていた。
何度かココロをへし折ってやった事もある。
実際、最近は率先して先頭を走るのは僕や悪2000で、組長は一戦を退いていた。
少なくとも僕にはそう見えていた。
だが三国峠を越える辺りで、僕はそう考えていた自分を蹴っ飛ばしてやりたい衝動に駆られていた。
”噓だろ?”
往路前半、32RにはツラくてS2000にはそうでもない低速区間で埋められると思っていた
僕の油断に因るツケは、思った程解消することはできなかった。
それは三国峠から先でも同じで、僕はいつものような”いつでも救助出来る”位置に着く事はできていない。
Sの旋回速度を利用して、往路下りのストレートで追いつめようとするがあと一歩届かない。
流石に400psを越えたRのパワーは伊達じゃない。
何より、下りで86みたいな突っ込みを平気で行うこのRは、きっと頭のネジが飛んでいる。
僕は楽しくて堪らなかった。
心の底から”ワクワク”がこみ上げてくる。
ふと、組長とシングルマッチを繰り返していた頃を思い出す。
よくよく考えてみれば組長とのタイマンは久しぶりだ。
・・・そうだ。
そういや、あんたバカだもんな。
あの頃だって、打てば際限なく響いていたっけ。
レベルが一つ上がった今でも、思い出せばにやけてしまう。
2年前は、一匹狼として実戦を繰り返していた。
今は、ある意味稽古に近い。
往路が終わる頃、僕は”あの頃”に戻っていた。
もう油断は無い。
勝つ為の戦略は、既にここにある。
車を転回させ、轡を並べる。
目の前にはR32GTーR、希代のキチガイ、我が組長。
僕は排気音が上がる前の、この一瞬の静寂が好きだ。
さあ、もう一本行こうか組長。
出会ってしまった、あの頃のように。
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