”これだから、ここに来る連中ってのは・・・”
復路スタート直後の、上りながらの緩い右の高速コーナー。
僕のS2000では3速で踏んでいくコーナーだが、比較的僕とS2000はこの区間を得意としている。
相手が32RであれS15であれGC8であっても、ここは正直”何とでも”できるところだ。
ところが今相手にしているのは、僕と同じS2000。
しかも一通り手が入っている2.2Lの悪党仕様だ。
僕が得意な所は相手も得意であり、しかも厚い中間トルクで僕を追い立てにくる。
”・・・かっわいくねえS2000だな、ったくよ〜!”
相手がターボならいくらでも方法があるが、きちんと仕上げたS2000はヒタヒタと
足音を忍ばせながら迫ってくる。
今年の春先にやった時よりも”一段と”伸びる速度域で走っているハズなのに
彼は今年の春先以上に詰めて追ってくる。
彼もここ最近の”盛り上がってる空気”にヤラれた一人だ。
32Rと同じで、打てば打っただけ響くこの人も大概だ。
最近はどちらかと言えば速い所と遅い所にわりとはっきり違いが出る連中とばかり
走っていたが、彼のように得手不得手がまるで一緒の人と走る場合は、ワンミスが命取り
の痺れる展開になる。
僕は笑いが止まらなかった。
こんな面白い事が、世の中に他にあるだろうか。
三国峠を右に望む左の高速コーナーを抜けると、そこから先は僕にとって”決め”にいく区間だ。
だが、車が同じなら考え方も同じ。
そしてここに集う連中も、車種に違いがあっても根本的には皆同じバカだ。
”アイツがいくならオレも行ける”
”ヤレるものならヤッてみろ”
そんなイヤらしいオーラを纏いながら二台のS2000はそれぞれ下り区間に堕ちて行く。
そこから先は、言ってみればただの”殴り合い”だった。
いつもなら、車種の違いが戦略を生みそれが週末のドラマを生み出して行く。
それが、32Rと絡む事が多かった最近の常だった。
だが、インファイター同士のクロースコンバットはいつもより闘志が前面に出る。
”オレの方が速い”
お互い、言いたいのはそれだけだ。
それを証明する為に僕も彼もアクセルを踏んでいる。
同じ初期型S2000の2台は、縺れ合ったまま下り区間を堕ちて行く。
そこから先の上り区間は往路の終盤戦とも言える区間で、言ってみれば距離をとって
自分の”決め玉”を放つ区間だ。
客観的に見ても、ここを得意とする僕は32RやS15よりも”頭一つ”抜きん出ている。
羽根がなくても”愛と勇気”があれば何とかなるものだ。
峠はサーキットと違い”車次第”ではない。
箱根某所も何方かと言えば”乗り手”に大きく依存する場所で、それが高速区間なら尚更だ。
僕は自分の愛機を信じてアクセルを踏み続け、ミラーの中で少しだけ小さくなったS2000から
逃げるように、今朝の一戦は幕を閉じた。
正直な所、僕はもう”タイムアタック”には興味がない。
何方かと言えば皆でモチャモチャになりながら走るのが楽しいのだ。
今朝はこの一戦の他に朝焼けレーシングの何人かとS15、S2000と僕とで偶々絡む事が出来た。
いつもの倍の人数で走ったこの一戦は堪らなく刺激的だった。
僕は、こういう事がやりたいのだ。
馬鹿げた事だとは思いつつ、今朝も思い残す事なく帰路についた。
いやあ、今朝はホント楽しかった!!
そういや今朝は32Rの人が居なかったな。
珍しい事もあるものですw
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