2014年1月13日月曜日

A life with DUCATI






今日は何の目的も持たず、ただフラフラしようと決めていた。

凍える寒さが心地良い。
しかし静謐な空気は我が相方に力を与える。
こういう日は、宥めるのに随分苦労する。

スロットルは一定の筈なのに前へ前へ出ようとするこの感じは、嬉しくて跳ね回ってる仔犬みたいだ。
都度、タンクに手を添えぽんぽんと二度叩く。

やがて猥雑な街を抜け前が開くと、ほっそりとした腰を抱き寄せスロットルを半ば強引に開ける。
街中ではつまらなそうにあげていた、少しだけヒステリックな彼女の声も甘い歌声に変わってゆく。

乗っている、というよりも繋いだ手を引かれていくような、嬉しさと楽しさと少し恥ずかしい
感じが入り交じった、何となくくすぐったい感じ。

狂ったように数字が跳ね上がり、バーグラフが踊る。
さっきまで見えていたアスファルトの目が、飛ぶように過ぎてゆく。
脳で感じる筈の”楽しさ”が、脹ら脛あたりからじわりと上がってくる。

しかしそんな時間は長くはない。
走れる場所が限られる冬は、自ずと道が込み合う。

結果、共存が難しい二種は、たびたび同じ道に犇めき合う事になる。

左腕が壊れる前にと、少しだけ上体を上げ道を外れる。
クールダウンする為に停めたハズなのに、彼女の横顔に見蕩れてしまう。
透明な冬の空気は、彼女の少し不機嫌な顔すら綺麗に見せてくれる。

髪をなぶる空気は冷たいが、火照った身体には心地良い。
普段は敬遠する缶珈琲ですら、身体に染み渡る。

気がつけば随分日も傾き、吐息も丸くなっていた。
現実的なリスクを考え、イグニッションスイッチをONにする。
今朝方、あれだけ嫌がっていたのが嘘みたいに軽やかに回り出す。

帰宅を急ぐ夕暮路ですら、楽しい。
来た道と同じ分だけ楽しめるのだから。

さて、もう一本。

タンクに手を添えぽんぽんと二度叩く。
ツーリングなんて言える距離ではないが、それでも僕には十分だった。

僕はこいつが大好きだ。

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