この街に住んでいると、夏の終わりとか始まりを肌で感じることができる。
帰り際に感じる空気は、もう夏ではなくなっていた。
いつものように海沿いの国道を歩いて帰る。
今夜の波は、少し柔らかい音がする。
私はここでonとoffのスイッチを切り替える。
そしてもうひとつのスイッチをonにする。
”朝晴れたらまた行こう”
帰宅後、真紅の愛機を目の前にし少し甘い声を出してみた。
脹脛からじんわりと広がる明日への期待。
カバー越しに伝わる艶っぽいライン。
その気にさせるように、くびれたウェストラインを薄くなぞりながら語りかけた。
バイクは女性に例えられることが多い。
なら、コミュニケーションはとかく大事だ。
この娘が少しばかり”気まぐれ”なのは愛嬌だ。
実の所、メリットよりもデメリットの方が
多いように思う。
付き合い続けるにはお金がかかるし
高価なブランド品ばかりを要求してくる。
相手に寄り添ったりもしないし決して優しくはない。
まるで現実的な”悪い女”のようだが、この娘は
とても綺麗だ。それも事実だ。
それはまるで甘い毒。
私は二年前にこの毒にヤラれた。
おかげで私の魂と財布は衰弱しきっている。
それでも私は明日朝箱根に上がるだろう。
きっと、笑いながら。
これは大人の本気の遊びだ。だからこそ仕事も本気。
常に全開で、本気で。
生活の中にDucatiがある。
それはつまりこういうことなんだ。
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